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旧約聖書時代の庶民の暮らし

なかなか見えない庶民の暮らしぶり

古代のいろいろな情報、記録が今に伝えられるのは、ほとんど王族や貴族など特別な階級の人たちのもので、庶民の情報というのは非常に少なく、普通の人々がどんな暮らしをしていたのか、知ることは意外に困難です。
旧約聖書の場合も、王侯、貴族の記事が中心的です。ものを書く、記録に残す、後代に伝えるという作業は誰でもできたわけではありません。
しかし、聖書にはところどころに、普通の人々の自然な、ありのままの暮らしが書き記されています。暮らしぶりを紹介するのが目的ではありませんが、そのためかえって本当の生活が見えることがあります。

預言者エリシャと普通の夫婦

(第二列王記4章8節)
ある日、エリシャがシュネムを通りかかると、そこにひとりの裕福な女がいて、彼を食事に引き留めた。それからは、そこを通りかかるたびごとに。そこに寄って、食事をするようになった。
女は夫に言った。「いつも私たちのところに立ち寄って行かれるあの方は、きっと神の聖なる方に違いありません。
ですから、屋上に壁のある小さな小部屋を作り、あの方のために寝台と机といすと燭台とを置きましょう。あの方が私たちのところにおいでになるたびに、そこをお使いになれますから。」
ある日、エリシャはそこに来て、その屋上の部屋に入り、そこで横になった。

預言者エリシャには、ゲハジという従者がいましたが、従者はゲハジ一人というわけでもなさそうです。裕福であっても、その数人の人をいつでも迎え入れるだけの住まいの規模を持ってはいない夫婦がここに出てきます。彼らは裕福で大邸宅を構えていたというほどの金持ちではなかったようです。
そこで、この夫婦がエリシャをいつでも迎え入れるために、計画したのが屋上の間です。簡単に増築するだけの経済力はあったということです。
今日のようにプライバシーを重要視する時代ではありませんから、十分な部屋があるのに、相互のプライバシーのために屋上の間を作ったとは考えられません。泊めるだけの設備はなかったのでしょう。
エリシャを迎えたのはそんな生活レベルの裕福な夫婦なのでしょう。
ここで、増築する設備が簡単に説明されています。
壁で囲った小部屋、寝台、机、いす、燭台。いずれも単数形で書かれていますので、エリシャのためのものです。
おそらく、エリシャが泊まるとき、従者は床に寝たのだと思われます。
まるで下宿屋のような感じがします。
預言者のような知的な人のための設備ですから、「寝台だけ」というわけにはいきません。しかし、庶民の生活が少し見えるようです。机、いすが一般的だったこともわかります。